ライフストーリー 38〜介護のセンス
桟橋でムロアジが釣れています。師匠が干物にしました。これはカタチが悪い方だそう。
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大学を半年留年したあと卒業。特別養護老人ホームに就職し、私は1階の担当になった。50名のお年寄りを1階担当の職員みんなで担当する。
(※以降、お年寄りとか高齢者とかでなく、単に「年寄り」って書きます。敬称に思われないかもしれませんが、愛と尊敬を含んでおります。)
介護職員は私のように専門学校で介護福祉士をとった男女の若手と、昔から施設で働いている主婦の方々という層がいた。主婦の方々は、専門学校で学んでいなくても、介護とその人の感性が合っている方が多かったと思う。子育てをしているから介護が出来るというものでもないが、非常に「センス」がある方が多かった。
さまざまな理論や介護論・技術も大事だけど、
何よりもまず、介護の仕事=「人間に対しての関心があるかどうか?」
近年、これがあれば十分なのじゃないかと、思っている。
逆に言えば、人に関心がないひとが介護職・福祉職をすると病みやすく、ものすごくストレスが貯まる。魂と仕事があってないから当然だけど。
って、ライフストーリー から脱線した。主婦の方のセンスの話です。
今も顔を覚えているけど、これから風邪を引くかもしれない年寄りを、事前に察知できるAさんという職員さんがいた。
「あ、あの人風邪っぽいかもしれないから注意した方がいいかも。」
とか言い、そのあと実際に年寄りが体調崩していたと思う。なぜ判るのかと聞いたら、
「風邪の匂い?が、あるのよねえ〜。」
と言っていた。
ほへー!とびっくりした。
それ以来、自分も意識するようになり、そっと知られないようクンクンするようになった。そして私も風邪の匂いがわかるようになった。(みなさんも多分わかると思う。)
あ、最初にこの匂いのこと書いちゃったけど。
センスと言っても、こういう「生体感覚」だけでなく、年寄りは、こうしたら喜ぶかなー?っていうことを、ごくごく内から自然に湧き出てくること、これが私の言いたいセンスというものです。
そうそう余談だけど、それから約20年後…。東京都T市の福祉施設で相談員&介護員をしていた時、その技を発揮したことがあった。
当時、施設送迎車の運転手Uさんの運転で、私は助手席に座って送迎をしていたことがあった。
Uさんは60歳過ぎた男性、表情が無くかなりのぶっきらぼう。ある時から、どうも何かUさんが「におう」ようになった。
A職員さんの言う風邪の匂いでもなく、なんとも表現のしようがない「クサイにおい」だった。でも、車という密室でないと気づかないくらいのもの。それがしばらく続き、消える気配がない。(私、嗅覚がすごく敏感だったのです。今となっては過去形ですが。)
本人に伝えるか少し悩んだけど、Uさんに直接話すことにした。
私「Uさん、最近体調変わりありませんか?」
Uさん「はい、特に。なぜですか?」
私「とても言いづらいのですが、Uさん、最近何か匂いがするんです。(ドヒャー!これからどう言おう?!汗・焦・汗)」
Uさん「臭いってことですか。(無表情で聞く。)」
私「うーん正直、良い匂いではないんです。私、風邪の匂いとか分かるので…どうも気になるので健康診断とかどうですか。すみませんこんなこと言って!」
Uさん「そうですか。」
…というやり取りをしました。
それから10日も経たないある日の朝、私の部署にUさんから電話がかかってきました。
Uさん「実はお話がありまして。砂原さんに臭うと言われてから病院へ行ったら、心臓の血管が2ケ所詰まっていまして。即手術が必要なので、しばらくお休みします。」
その後無事にUさんは復帰。また一緒の車に乗って仕事を始めました。すると、
Uさん「まだ、においますか?」
私「??」
Uさん「匂うとおっしゃってたでしょう。」
私「あああーー!!すみません!そうでした!(すっかりくさかったのを忘れている私。ヒドイですね。)」
………匂い嗅ぐ。……
私「わああ!はい!全然何も、においません!!(本当に臭わないのですごく驚いた)」
ということがありました。
って、特養のこと書こうと思ってたのにー。
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